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日米中関係の抜本的見直しを

 神奈川県日中友好協会の会長に選任されてから、間もなく10年になる。年齢も傘寿を迎えたので、事務局には交代したい旨申し出ているが、どうなるだろうか。

それはさておき、この10年を振り返ると、中国の劇的な台頭ぶりに改めて驚かざるを得ない。10年前、GDP(国内総生産)が初めて1兆ドルを超え、世界 7位にランクされたときも、世界を驚かせたが、今年は5兆ドル規模に達し、日本を抜いて世界2位になる。すでに政治、経済、外交などでは米国と並んで国際 社会の主役を演じるまでになっている。米国では「G2(米中)時代」論が唱えられている。県日中の会長として、中国人民が達成したこの歴史的な大業に向き 合ってこられたことを、心から嬉しく、光栄に思っている。

もう一つの歴史的体験は、冷戦終結、ソ連崩壊後、唯一の超大国となって世界に君臨してきた米国が、9・11事件を機に強暴な戦争国家に変質し、「テロとの 戦い」を名目にアフガン、イラクに侵攻して破壊と殺戮を繰り広げて威信を失い、世界中に金融危機と経済危機をまき散らしてドルへの信任を崩し、自ら「アメ リカの時代」の幕を閉じつつあることである。一つの世界覇権の成立と破綻を目の当たりにしたのも、稀有な体験であった。

この10年は日本にとっても波乱に満ちた歳月であった。前半5年はブッシュの戦争政策に加担した小泉内閣によって日本型福祉国家は解体され、弱肉強食の格 差社会に変貌した。首相の靖国神社参拝の強行によって、日中関係も破壊され、冬の時代に入った。日中関係の極度の悪化を嫌う米国の意向もあって、安倍訪中 による「戦略的互恵関係」の合意が実現し、日中関係はようやく正常化した。

昨年8月には、戦後60年続いてきた自民党一党支配が、国民の歴史的審判によって崩壊し、「対等な日米関係」「アジア重視の外交」を掲げる民主党政権が誕 生した。鳩山首相、小沢幹事長らは「日米中は正三角形」を説き、日中韓の結束を重視している。他方、オバマ大統領もアジア戦略を日米基軸から米中基軸にシ フトしつつある。日本の対米貿易14%、対中華圏貿易30%、対アジア圏貿易49%の現実は、戦後60年続いた向米一辺倒の対外政策の抜本的見直しを求め ている。2世紀ぶりに世界の大国に復帰しつつある中国、「アメリカの世紀」と言われた20世紀の終焉後10年で覇権の座を降りつつある米国―この2大国に 挟まれた日本は、文字通り自前の外交力が問われる時代に入ったことを自覚しなければならない。

(久保孝雄)

『日本と中国』10年3月25日所載

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