■故郷異郷 2010年2月28日  董皓月さん(上海出身・東京在住) 
故郷で旧正月を過ごすのは10年ぶりのこと。
飛行機に乗るたびに、故郷と異郷の間に徘徊する葛藤の感情を覚える。心が騒ぐ。

 故郷の年間GDPは去年、8.7となり、世界に「強」と「富」を誇った。しかし長年異郷に生きる私には、故郷は記憶の中にしか存在しない、戻れない場所。何年経っても、記憶の中の故郷はあのころ私が離れる時のままで、決して変わることがない。しかし中国に帰るたびに、私はあのころの故郷から遠さがるように思える。故郷は時とともに絶えずに変化していく。何もかもよく分からない感じ。地元の方言さえ流暢に話せない感じ。異郷へ向かうような怖さ。不安。
 故郷は、もう私の故郷でなくなっている。

 ここ数年、自分の成長につれ、自分を受け入れた日本に根を下ろした。この地にさえ戻れば自分の生活のリズムに戻れる気がする。
 成田国際空港に立つと、故郷と同じ青い空に向かって、東京のますます暖かくなる空気を深々と吸い込む。街の人々は依然として旅立ちが慌ただしい。騒がしいのは騒がしいままで、寂しいのも寂しいまま。私はいつもの微笑を口もとに広げる。

故郷を思いつつ異郷を愛する心は、いつになっても色褪せない。