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 中国人学者の沈才彬(多摩大教授)さんは、最近の中国台頭の勢いを示すものとして、「三つの米中逆転」に注目している。沈さんが指摘しているのは、自動車世界一の米中逆転、日本の貿易相手国№1の米中逆転、来日外国人数における米中逆転の3つである。

20世紀初頭、自動車産業が誕生してから1世紀以上にわたって、生産と販売の世界一は米国が独占してきた。それが今回の経済危機で生産、販売とも大きく衰 退し、世界一の座を中国に譲り渡すことになった。今年、1~7月の新車販売台数は米国の580万台に対し、中国718万台で中国が世界一になった。今年の 世界の自動車販売台数は5500万台と見込まれているが、うち1100万台を中国が占めるという。しかも普及率は米国の80%、日本の60%に対し中国は 5%だから、中国の世界一の座は当分ゆるぎそうにない。

今年1-7月の日本の貿易額のうち対中輸出額は18.7%を占め、米国の16%を上回った。通年でも米国を上回る見通しだ。香港を含めると07年から中国 が№1の地位を占めている。これは日本の貿易統計が始まっていらいのことであり、日本の貿易構造が歴史的変化を起こしていること、日本経済が米国離れと中 国依存を強めつつあることを示している。

来日外国人の数でも、米中逆転が起きている。07年の来日米国人81万人に対し、来日中国人は94万人で、初めて中国が米国を上回ったが、この差はその後 も拡大し続けている。また、日本人の海外渡航先でも、00年から米中逆転が進み、07年には中国に渡航した日本人が390万人、米国(本土)へは130万 人で、ギャップは開く一方である。

これらの事実は、世界経済における中国の存在感の高まり、日中経済の緊密化、一体化の進展、日中両国民大交流時代の始まりを示しているが、にもかかわら ず、他方では両国民の相互嫌悪、相互誤解が深まっているという深刻な問題がある。内閣府の調査(07年)によると、日本人の対中好感度は31%と極めて低 く、呼応するかのように中国人の対日好感度も4割を切っている。

この背景には「毒入り餃子」事件などを機に、マスコミなどで煽られた台頭する中国への反中、嫌中ムード、「靖国問題」などに反発する中国の反日、嫌日感情 の高まりなどが考えられるが、いずれにせよ日中関係の将来にとって極めて由々しき事態であり、日中友好運動の鼎(かなえ)の軽重が問われている問題でもあ る。

(久保孝雄)

『日本と中国』09年10月25日所載

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