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こんどの「防衛計画の大綱」(12月17日閣議決定)を読んで驚いた。タカ派色を出すまいとの工夫の跡は見られるが、最 大の特色は中国を「仮想敵」に位置づけていることだ。党内に多数の反中派を抱えていた歴代の自民党政権でさえ、ここまで踏み込むことはしなかった。それを 「アジア重視の外交」を看板の一つにして政権交代した民主党が、党内でも国会でも何の議論もせず、あっさり閣議決定してしまった。あたかも尖閣諸島沖の事 件で高まった(意図的に高められた)反中世論に悪乗りするように、沖縄、南西諸島への陸上自衛隊配備、戦闘機や潜水艦隊増強などの「対中シフト」を鮮明に 打ち出している。

それにしても、菅内閣の外交・防衛政策は危険すぎる。国民の平和と安全のため、近隣諸国との友好関係を深め、平和な環境を創造していくのが外交の基本なの に、緊張を高めることばかりやっている。米国の世界軍事戦略との一体化をめざす「日米同盟の深化」、集団的自衛権や武器輸出3原則の見直しなど、キナ臭い ことばかりだ。最近は首相や外相の口から、半島有事の際の自衛隊出動や日韓の安保同盟といった話まで飛び出している。クリントン長官まで半島有事には在日 米軍基地の韓国軍との共同使用が望ましいなどと言い出している。当然のことながら、これに対しては韓国、中国からの強い反発が起きている。半島有事が起き ないように最大限の外交努力をするのが政府の責任ではないのか。現に、中国の懸命な外交努力によって半島は一触即発の「敵対」から「対話」に転換したと見 られている(英FT紙、1.7)。

これらの「反中シフト」は、「中国の軍拡」への対抗措置だとされている。しかし、軍事評論家の田岡俊次氏は「経済成長で国防費が増えるのはどこの国も同じ で、”異常”ではない。日本が80年代、韓国、台湾が90年代に行った兵器の更新を、中国はいま行っている形で、軍拡とはいえない。国家財政に占める国防 費の割合も減少している」と言っている(サンデー毎日、11.21)。

昨年12月、次期国家主席と目される習近平副主席が、訪中した公明党山口代表との会見で重要発言を行っている。「両国の共通利益は違いを遥かに上回る。早 急な関係改善を望む。中国は日本をライバルではなく、パートナーと見なしている。中国は覇権を求めることはしない」(各紙12.15)。青筋立てて「中国 脅威論」を叫ぶより、パートナーとしての日本を重視する次期国家主席の真摯なメッセージに、真摯に応えることが総理のなすべき仕事ではないのか。

 (久保孝雄)

『日本と中国』2011年2月15日号 所載

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